遺品整理業者の話

遺品整理業者の話

母の時の話

遺品整理業者に、母の荷物を整理してもらったことがある。母を亡くした経験のある人なら、みんなが同じだと思うが、なかなかつらかった。そして、今度は自分の終活のことを考える年齢になってきた。もう一度、あの時のことを振り返って、人の迷惑にならないようにどう準備するか考える材料にしたいと思い、振り返って、書き記しておこうと思う。

古い一軒家に一人で暮らしをしていた母は、体調を崩して入院し、あっという間に、亡くなってしまった。はじめはどうして良いかわからず、通帳をはじめ重要そうな書類を集め、解約すべき契約がないか調べたり、遠方から葬儀だけしか来れない親戚もいるので、形見わけをできそうなモノはないか、ザッと見て途方に暮れた。

兄も私も遠方に住んでいて、なかなか来られないので、目の前のできることをやったほうが良いのかなと、葬儀の後に動こうとしたのだけれど、母がまだいる気がして、動く気になれなかった。心が拒否してるからやめようと、みんなの意見が一致した。

本格的に遺品の整理をしはじめたのは、四十九日の頃からだったと思う。箱に入った使ってない食器などをリサイクルショップに持って行ったり、大量の本をネットの中古本屋さんに送ったりした。タンスや収納スペースのモノは、燃えるゴミと燃えないゴミに分別しながら袋に入れていった。そのうち段ボールへと変わり、部屋に山積みになった。布団も想像以上に多かった。

思い出に浸りそうな写真や思い出の品は、一つを見つけると、先に進まなくなった。なので、判断に時間のかかるものは全て、一つの部屋に集めた。

一周忌の時まで、自分の家に持って帰って、残ったものは全て処分していいものということにしようと、兄と取り決めた。そして、一周忌の後に、リサイクルショップや不動産屋が来でもらえるよう手配をしようということになった。

家具や花瓶、焼き物の置物などは、出張買取してくれるリサイクルショップが持っていってくれると思っていた。何件かに電話をしたが、古いモノは要らないと断られた。一件だけ、小物などだけで良ければと、見に来てくれた。

可愛らしいお人形の焼き物や、花瓶、「すてきですね。センスがいいですね。これなんかホントにかわいい」と言いながら、見てくれた。亡くなった母のセンスを褒めてくれるリサイクルショップの買取の女性に、母の話もしながら小物の説明した。そのほとんどを持っていってくれた。大切に扱ってくれて、嬉しかった覚えがある。思ったより買取額も良かった。お世辞じゃなく褒めてくれたのだと思えた。

不動産屋も訪ねてきた。とりあえず、ホームページに写真を載せて、売りに出すことにした。この辺りの地域は、かなり値下げして売るが、まずは査定通りの価格で様子をみますとのことだった。売れた時には、部屋は空の状態にして渡すことになる。荷物を整理するのに、いざとなったら、遺品整理業者に頼むしかないという話が出た。私はなんとなく気が進まなかった。

遺品整理業者に頼まなければ、どうしようもなかった

「なんでも良いですよ、見せてください」と電話がかかってくるリサイクルショップは都会だけなのか。田舎のリサイクルショップは、持っていきたいものは決まっているようで、それがないと見にも来なかった。

大型の家具や電化製品さえなければ、自分の頑張りでなんとか出来ると思っていた。そっくりそのまま残ってしまってはどうしようもない。ごみ袋も、ゴミステーションに出せるような数じゃない。市のゴミ処理場まで行くのだって、乗用車に乗せられる量じゃない。家具だって一つや二つではない。大型ゴミの回収に出すのも現実的ではない。誰かの手を借りなければならないことははっきりしていた。

家族だけでは片付けられる量ではないのに、遺品整理業者に頼むことに抵抗を感じるのはなぜか。自分でもわからなかった。だけど、なんだか嫌だった。何もしないわけにはいかないので、ネットで、遺品整理業者の相場とトラブルを中心に、口コミをみはじめた。

三回忌は次の年だから、そこあたりまでいいんじゃないか。家が売れない方が良いとさえ思いはじめていた。今、考えてみると、母の家がなくなるのが嫌だったのだと思う。母が死んだことに納得していなかったんだと思う。死を認められないから、母のものをゴミとして扱うことに抵抗があり、罪悪感があったのだ。

はじめは、恐ろしいトラブルの口コミばかりが目についた。見つかった貴重品やお金を盗まれた。思い出の品を目の前で壊された。雑な扱いをされて悲しくなった。来た業者の乱暴な言動で不快な思いをした。『失敗した』と書いてある言葉に心がえぐられた。母の荷物を雑に扱われるのが嫌だ。その可能性のある人に頼みたくない。選んだ業者が嫌なところだったら、取り返しがつかない。母にも兄にも申し訳ない。失敗しないように、しっかり調べようと当時は思っていた。

遺品整理業者選び

今は遺品整理業者も増え、それらを集めて一括見積もりを出すホームページもある。新聞やテレビに出た業者もいるし、遺品整理士という資格の有無やスタッフの顔写真を乗せるところも多くなっている。遺品整理を頼みやすくなってきたと思う。

当時は、専門の業者の出始めで、良い業者もあるが半分は悪い業者と思っていた。業者が自社のホームページで載せている目安の金額には、幅がありすぎてわからなかった。遺品整理業者を頼んだという口コミには、金額の記載がほとんどなかった。ネット上には、頼んで本当に良かったという感想と、ひどいトラブルに巻き込まれて怒っているという感想が混在していた。

地元の業者がないか調べてた。二件だけだった。一つのホームページは、一般的なざっくりした説明と、相談してくださいと電話番号がのっているだけだった。何件か見積もりをしたほうが良いと、トラブルに巻き込まれた人たちが口コミに書いていたので、地元の業者だけでなく、出張してくれる他の地域にある会社も調べた。ホームページである程度情報がわかる何件かに絞った。

私は、口コミの中に出てくるおもなトラブルを列挙した。そうならないよう、見積もりを頼む電話をする時に、質問をしようと思っていたのだ。そして、実際の見積もりの時には、一人では不安なので、夫にもついてきてもらおうと思っていた。

聞きたいことは、5点。大体の金額。現地の見積もりは休日でも可能か。残っている荷物の全てを持っていってくれるところに頼みたいが、持っていくことができないというものはあるか。当日になって、引き取れないとか、追加金額の請求はしないか。駐車スペースが少ないので、トラックの大きさと作業員の数。

遺品整理業者のホームページには、当日の流れや、作業風景の写真ものせられていた。悪い業者を回避できれば、遺品整理業者に頼むことは、良い方法なのではないかと思えてきた。やって良かったと言う口コミが思っていた以上にあったからだ。みんなどうしようもなく、申し訳ない気持ちで頼んで、仕方なかったと言うと思っていた。ところが、頼む時は気が進まなくても、頼んで本当に良かった、自分の時もお願いしたいという書き込みが意外と多いのだ。中には、施設に移るために業者を使ったが、亡くなった後の遺品整理の予約できるから予約したという人もいた。

夫に、聞きたいことのリストを見せ、見積もりに一緒に立ち会ってもらえるか聞いてみた。「最近、ずっと忙しくて、休みを取れるかわからないんだよなぁ。どんなもんか、直接業者と話してみるか」と言って、すぐに電話をかけはじめてくれた。リストにある内容も確認してくれた。

一般的な話を繰り返し、見積もりを頼むことが決まったら、日程調整するのにまた電話してくれという業者が続き、一件だけ、詳しく聞いてくれるところがあった。

大型ゴミのことを主に聞いてきた。業者は、それなら何トントラックだとダメで、その上のトラックになるからそれなら余裕ができるとか、作業員は何人で、このくらいの時間でできるとか、金額もはっきり言ってくれた。追加料金が発生したら困ると問いかけた返事には、多めに見積もって金額提示しているから大丈夫と答えてくれた。さらに、買い取りできるものや、荷物の量が少なければ減額してくれるとのことだった。キツキツのトラックだと言い切れなかいが、今回のケースは、話に偽りがなく、大幅な差がないのなら、現地での見積りをしなくても、その金額以内でできますよと言いきった。そして、結局、そこに頼んだ。

もう一つ、私には不安があった。母の思い出の品がゴミとして持っていかれるのを見たくなかった。わがままといえばその通りだ。業者の目星をつけたと兄に電話するときに、相談してみた。業者を選んで、金額がわかるところまでしてくれたから、あとは直接電話をして、日程調整して、作業当日の立ち合いをすると兄が快く引き受けてくれた。私はとてもほっとした。

私は良かった

立ち合いが終わり、兄が空っぽの家の中の写真を携帯で撮って送ってくれた。そのあと電話で、小屋のことをすっかり忘れていて、業者に言われて開けたらぐちゃぐちゃで、それも全部持って行ってくれたこと、見積金額の中でおさまったこと、作業のはじめに丁寧なあいさつしてもらい、気持ちが落ち着いたこと、貴重品や気になるものは持ってきてくれて兄が判断したこと、みんなキビギビと働き良い人たちだったことを話してくれた。

母があの世に引越すみたいだと言っていた。写真や兄が子供の頃に描いた絵や工作で作ったものも業者の人が持ってきてくれたから見たと言っていた。そして、立ち合いをして良かったと言っていた。

オマエも来れば良かったのになと言われた。確かに、兄妹で見送るのも良かったかもしれない。だけど、私は、片付けに何度か一人で実家に行き、ひととおり目を通していたし、立ち会うと泣いたと思う。忘れられない悲しい思い出になる気がして、やっぱり、行かなくてよかったのだと思う。

スッキリした。やって良かった。とにかくスッキリした。兄も同じだと言った。なんだかわからないけど気が進まない気持ちではじめたが、なんだかわからないけどスッキリした。自分で業者選びをして、遺品整理に関わって良かったと心から思えた。

だからといって、遺品整理業者を他人に進めるかと言われたらわからない。全てが良い業者だとはやはり思えない。私は良い会社に出会えて、トラブルがなかったから、良かったた言えることだ。自分の時も頼みたいと口コミに書いていた人の気持ちが理解できた。私もそう思う。

今のところは、とりあえず、遺品業者の連絡先を冷蔵庫の横にマグネットで貼ってある。

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