父のエンディングノート

父のエンディングノート

父の希望通りに、ひとつも出来なかった

92歳でこの世を去った父。
90歳を過ぎてからは、記憶もあやふやで会話もちぐはぐだったけれど、
亡くなる前の日まで一人で歩き、ご飯も自分で食べていました。

好奇心旺盛で勉強好きな父は、80代半ばから地域の生涯学習センターに通い、
そこでのテーマのひとつ「終活」で
エンディングノートを作成しました。

いつお迎えがくるやもしれぬ年齢の父は、きっと
真剣に、嘘偽りなくノートを書いたことでしょう。

父が生きている間に、その希望を(こっそり)読み
そんなふうにしてほしいんだぁ・・と思っていました。

父の大きな望みは
・延命治療は不要
・葬式は身内だけで、香典は辞退
・田舎にある墓に入る
というものでした。

でも実際には、これらの希望はひとつも叶えてあげられませんでした。

父は、病院でチューブにつながれ、酸素マスクをされ、
心臓マッサージをされて・・・。
点滴が腕から入らず、首から入れて。
目の前にいる父が少しでも長く生きていてくれるようにと、
お医者さんにしてもらえることは全部してもらって。
最後は深夜、家族が誰も側にいない中、息を引き取りました。
父は苦しかったかもしれないけれど、
「もう何もしないでください」とは、どうしても言えませんでした。
どんな状態でも生きていてくれれば・・という思いだけでした。

お葬式は、身内と家族の近しい友人、会社の方が参列してくれて、
お香典はいただきました。
母の葬儀の時は、
父が「故人の遺志ですから」と一人一人に向き合って、
香典を辞退していました。
でも私達には、来てくださる方を断ったり、
香典を辞退することは出来ませんでした。

お墓は、田舎に誰もいないことと、
後を継いで管理できる人がいないことから
都内の永代供養墓にうつして、そちらに埋葬しました。

父の希望通りには、ひとつもしてあげられず、
私達家族の思ったようにしてしまいました。

ただ、葬式やお墓のことで迷っていた時に
「お父さん、どうしたらいい?」
と天に向かって尋ねたら
「お前達の楽なようにすればいい」
という返事が心に届きました。

父のエンディングノートは一緒に棺に入れました。

私も
・延命治療は不要
・葬式も不要
・お墓には入れないで海に散骨
という強い希望があります。

ただ、私の希望として家族に口頭で伝えてはありますが、
実際には父の時のように、
残された人達がその時に決めるのだろうと思っています。

エンディングノートって何のために書くのでしょうか。
通っていた生涯学習センターでの課題だったこともあるけれど、
父は何のために書いたのだろう。
どんな気持ちで書いたのだろう。
希望を伝えるため?
自分の気持ちの整理のために?
友人の連絡先や銀行の情報など、忘れた時のために?
その時の自分の状態を確認するため?
・・・それは父にしか分からないこと。
でも近いうちに訪れるであろう「死」を想像し、
残された人を思い、自分を見つめる時間だったのでは・・。

どんな気持ちになるか、私も書いてみようかな。
父を見習って。

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コメント

  1. いずみさんへ

    まずはお父様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
    併せて、いずみさん外ご家族の皆様のお心落としの無いように、
    憶えてお祈りいたします。

    私は複雑な家庭に生まれました。
    天涯孤独です、身寄りは全くありません。

    そういう私に何が申し上げられるのかわかりませんが…

    このようにいずみさんご自身が今なおお父様を想い、
    お父様のご希望を叶えて差し上げられなかった事を、
    深く悔やまれていらっしゃる自体…

    真に親孝行されていらっしゃるのだと私は受け止めています。

    彼の世でお父様の御霊が安らかでありますように。
    そして…この世でいずみさんのお気持ちが穏やかでありますように。

    前田穂花

  2. 前田穂花さんへ

    温かな優しいコメント、心に沁みました。
    ありがとうございます!

    いずみ

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