ミドルシニアの心に刺さる!おすすめ小説!「オリーヴ・キタリッジの生活」

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ミドルシニアの心に刺さる!おすすめ小説!「オリーヴ・キタリッジの生活」

中高年の文学!「オリーヴ・キタリッジの生活」エリザベス・ストラウト著

「悪い人じゃないんだけど… 変わり者で、付き合いにくいよね」

あなたの周りに、こんな人はいませんか?

この小説の主人公、元数学教師のオリーヴ・キタリッジは、まさにそんな女性です。

「訳者あとがき」でも「中高年の文学ということが大きなポイントになっている」と書かれているように、この作品は、アメリカの小さな港町で暮らす彼女の、40代から70代半ばまでの数十年が淡々と綴られる短編集です。

ときどき夫婦間や周辺の人物に小さな嵐が起こったり、親子の感情のもつれや嫁姑問題などが起こるほかに、物語にドラマティックな事件や感情を激しく揺さぶられるような悲劇は起きません。

しかも、オリーヴという女性が主人公のオムニバス短編集にもかかわらず、脇役や通りすがりの1人としてしか登場しないストーリーもある、という風変わりな小説なのです。

まるでその構成は、彼女が生身の人間(小説の中での)であることを検証していくかのようです。

純粋で真っすぐ過ぎる…

そんな、どちらかというと地味な本作に強く惹かれるのは、中年を過ぎた女性の繊細で複雑な心理描写が、オリーヴの強烈な個性に絶妙に溶け合って奇妙な説得力でぐいぐい迫ってくるからでしょう。

登場人物は、彼女の家族や、小さな町での顔見知りと通りすがりの人々。

とても狭い社会での人間模様ですが、読み始めると、この世界に引き込まれて抜け出せなくなってしまいます。

小説の中で語られるのは、ミドルシニアからシニア世代への女性(男性も)が辿る、人生でのあれこれ。

「こういうのは、世界共通なんだなあ」と思わせるような出来事もあります。

「こんなとき、あなたならどうする?」と問いかけられるような場面もあり、胸が苦しくなることも。

そんな人生の大きな波や小さな波の間を、ときには怒り狂い、ときには泣き叫びながら、彼女は溺れることなく、しっかりと力強く泳いでいくのです。

共感したり、切なくなったりするエピソードも盛り込まれているので、読み進むうちに、オリーヴという女性の動向に心をがっしりと掴まれてしまいます。

作者はことあるごとに容赦なくオリーヴの心の奥深くをさらし出すのですが、読んでいくうちに心がざわざわヒリヒリするのは、彼女が「やらかしてしまう」のが予定調和の展開ではないからでしょう。

彼女の周辺は、なぜ、こうも不穏な空気に包まれてしまうんだろう? 

けれども、この年代の女性(男性も)なら誰もが感じたことがあるかもしれないネガティブな感情の爆発は、後を引くことはありません。

親切で情に厚く、知性も人望もあり、優しい夫と愛する息子がいて、満たされた人生を送って来たかに見えるオリーヴ。

卒業してかなり年月を経た、かつての教え子が登場する“上げ潮”では「尊敬されていた元教師」の一面も垣間見えます。

教師で、妻で、母であるオリーヴの人生は、荒波にもまれたというほどではない。

ただ不器用だからなのか、彼女の低すぎる怒りの沸点は、ときには更年期の不安定さもあるのかもと、思いをめぐらせ、自分とは正反対のオリーヴにどっぷりと感情移入してしまうのです。

ときは流れる。

極端な情緒不安定で、まっすぐすぎるゆえの過激な言動などで「熱くなりすぎる」ために、いつも周りから浮いた存在だったオリーヴ。

ですが、辛い別れも、過去のしこりのくすぶりからの親子の断絶も、すべて飲み込んで、彼女なりに消化して、数十年のときは静かに流れてゆきます。

それとともに彼女は、年齢を重ねるごとに悲しみや苦しみを乗り越え、波にもまれた石のように少しずつ丸くなっていくのです。

そして生まれる「反省」と「感謝」の気持ち。

きっかけは「居場所をみつけたこと」。

70代半ばにして「満ち足りる」ことを知ったオリーヴ。

『人生は、年齢と経験を重ねて味わうもの!』

と思わせる、前向きなラストに胸が熱くなりました。

小さな港町の自然描写の美しさにも心打たれる、おすすめの小説です。

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